2014年6月12日木曜日

イスラエル 超正統派(ハレディム)に兵役と労働を課す

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イスラエル政府は、国内の超正統派(ユダヤ教)に兵役義務を貸し、さらにはイノベーションのために労働させようとしている。

超正統派は「ユダヤ人とは何よりも神を畏れるユダヤ教徒でなければならない」と信じる人々のことで、超正統派にとってはイスラエル建国は「神による救済を待望する」という伝統的なユダヤ教の観点からは、あってはならない「自力救済の試み」だという。
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超正統派(ハレディーム)とは?

情勢分析 イスラエルにおけるユダヤ教超正統派の思考と行動 - 11-01-53.pdf
『彼ら超正統派とは何ものか、といえば、端的に「ユダヤ人とは何よりも神を畏れるユダヤ教徒でなければならない」と信じる人々のことである。その際、「神を畏れる」ことの具体的な内容は、ユダヤ教に代々受け継がれた「正統的な伝統」を墨守し(祖法遵守)、ユダヤ律法の教習と研鑽とを生活の中心に置き、これを守る人々のネットワークを後生大事に暮らして行くことにほかならない。ヘブライ語では彼らを称して「神を畏れる人々(ハレディーム)」と呼ぶ。』 (P25)

『超正統派はイスラエルを「ユダヤ人国家」として特殊な存在であるとは認めないものの、異教徒によって支配される国家に寄留する離散ユダヤ人が心掛けていた「遵法精神」を維持し、イスラエル国家の国法にしたがってその市民となる。これは、イスラエル建国が「神による救済を待望する」という伝統的なユダヤ教の観点からは、あってはならない「自力救済の試み」であって、ユダヤ人として明らかな逸脱であるばかりでなく、背教行為でさえあるという従来の主張から大きく譲った立場であった。その対価として彼らは、イスラエル国家の公的領域におけるユダヤ教規範(公休日や食事戒律 etc.)の法制化や私的身分法への介入(ユダヤ教規範に則った婚姻やユダヤ人規定)を民族派に認めさせ、また彼ら自身についても「指定教育の基本的自治」と「兵役義務の免除」とを勝ち得たのである』(P26)
超正統派(ハレディム)とは、最も敬虔なユダヤ教徒という認識でいいと思う。

全人口の10%の超正統派は、兵役を免除され、さらには教育費用を国から支出させきた。超正統派にだけ与えられる社会保障制度だという認識ができるのではないか。

それが一般の国民との間で問題となってきたようだ。
『国民皆兵を建前とするイスラエル国家にあって、兵役という義務を負担せず、イェシヴァに引き籠ってさえいれば結婚しようが子供ができようが政府が最低限の生活の面倒を見てくれるという超正統派の特権的地位に対しては、一般の国民から常に厳しい批判と非難とが浴びせかけら得てきた』(P26)
こういった国内の情勢によって、超正統派は兵役を課せられ、さらには働くことを促されだしたようだ。

超正統派を労働に促しハイテク業界へ

『イスラエル「ハイテク業界に超正統派ユダヤ教徒を」 - WSJ
2014 年 6 月 10 日 14:01 JST

【テルアビブ】イスラエルのハイテクブームの中で、同国政府や同国最大のハイテク企業雇用主の多くは、ジャバ・スクリプト(JavaScript=プログラミング言語)を書く人々と、スクリプチャー(scripture=ユダヤ教教典)を読む人々との間のギャップをなんとか橋渡ししようと懸命になっている。

 イスラエルのハイテクに精通した国防産業とその小さな市場は、この国を世界のハイテク産業でもっと大きなプレーヤーにしようと団結した。その結果、一群の新興企業やハイテク企業家が誕生するとともに、買収仲介取引、ベンチャーキャピタル、株式市場での資金調達が続き、テルアビブは世界でも最大級のハイテク・ハブ(中心地)の一つになった。

 しかしイスラエルの人口のうち、大きな部分を占め、しかも急速に拡大している社会層が欠落している。それはイスラエルの超正統派ユダヤ教徒、つまりハレディム(ハレディ階層)だ。

 「2、3年前まで、超正統派ユダヤ人は『スタートアップ(起業)国民』の一端を担っていなかった」とイツィック・クロンビー氏は言う。同氏はハレディ(超正統派)新興企業アイセール・グローバルの創設者で最高経営責任者(CEO)だ。同氏はまた、最近登録された非営利団体(NPO)のハレディ・ハイテク・フォーラムの共同設立者でもある。

 先月初め、イスラエル経済省の主任科学担当官は、2つの構想を打ち出した。超正統派起業家に提供される200時間の無料講習と、最大200万シェケル(約6000万円)のハレディ新興企業向け国家資金プログラムだ。資金は新興企業自身に提供され、非政府系の投資家から1シェケル受けるごとに政府から株式投資あるいは融資として5.6シェケル受け取れる。

 同担当官はインタビューで「ハレディのハイテク従業員が多くなれば、ハイテク従業員全体が多くなり、イノベーションが活発になる」と語った。

 政府の後援を得て、ハレディムに照準を合わせたプログラムが登場し、過去5、6年間にわたってコンピューター科学、エンジニアリング、バイオテクノロジー研究を推進している。政府は科学的な学術研究に携わるハレディの男性のための授業料全額に相当する融資を提供している。卒業すれば、融資は受益者がもはや返済しなくていい贈与になる。イスラエル政府はまた、新たなハレディ・スタッフを雇う雇用主に補助金を提供している。

 ITサービス提供会社のマトリックスITや半導体・ソフトウェア開発サービス会社のラチップなどの企業は、ハレディの女性の雇用率が比較的高く、今年第1四半期時点で25歳から62歳までのハレディの女性のうち69%が開発や品質保証サービス提供のために雇用された。これらの企業は女性たちに対し、男性と同じ労働環境を提供している。すなわち検閲済みのインターネット接続にされていて、ユダヤ教の規律に照らして倫理的に不健全とみなされるウェブサイトへのアクセスが阻止されている。そして労働時間は8時間と、ハイテク業界基準からみて比較的短時間だ。これは子供の世話をするためだ。

 これらの企業は既に、数千人のハレディ女性を雇用し、サポートや技術サービスを提供している。低賃金と補助金のおかげで、これら企業はインド、ロシア、東欧からのアウトソーシング(外部委託)サービスと競争できるようになっている。

 しかしハレディの男性の場合は、ハイテク部門に進出するのがもっと困難だった。経済省の平等雇用機会委員会によって最近実施された調査では、イスラエルの雇用主のうち37%はハレディ男性を雇用したいと望んでいない。同委員会は報告書で、「調査データは、総じて一般市民の態度や、とりわけ異なる共同体(ハレディ)出身の従業員に対する雇用主の態度に関して難しい問題を提起している」と述べている。

 1世代(約30年間)以上にわたって、イスラエルの超正統派宗教階層、とりわけ男性たちは、おおむね自習室、神学校、シナゴーグ(ユダヤ教会)にこもり勝ちだった。イスラエル経済省によると、25-64歳のハレディ男性のうち、今年第1四半期時点で雇用されている人はわずか45%にすぎない。

 イスラエルのタウブ社会政策研究センターの調査では、ハレディムはイスラエルの人口800万人のうち約12.5%を占め、10年前の9%から拡大している。ハレディ共同体の間の貧困率は過去10年間で44%から57%へと増えている。』
イスラエル「ハイテク業界に超正統派ユダヤ教徒を」 - WSJ
さらには、先日、この超正統派にも兵役が課される法案が可決されている。

超正統派を兵役へ

『 イスラエル国会は12日、超正統派ユダヤ教徒の男性も兵役対象とする法案を可決した。イスラエルでは18歳以上のほとんどの男女に兵役義務があるが、超正統派はユダヤ教を学ぶ必要性を理由に免除されてきた。法案可決を受け、2017年から段階的に超正統派の男性は兵役に就く。

 超正統派は教義を原理的に解釈するユダヤ教の最右派で、人口の10%近くいるとみられる。1948年の建国直後からユダヤ教学院(イエシバ)で宗教を学ぶことを条件に兵役を免除されてきた。

 超正統派側は、学習の必要性などを理由に法案に反対。今月上旬には大規模な反対デモも行われた。(共同)』
超正統派ユダヤ教徒も兵役 イスラエル、2017年から - MSN産経ニュース

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